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映画『教皇選挙』の舞台、バチカンの思い出|2002年リラ通貨時代からたどる3度の旅と、2025年の今想うこと

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映画『教皇選挙』を見たことで、かつて自分が旅行で訪れた際のサン・ピエトロ広場や大聖堂の美しさ・素晴らしさが、鮮明に蘇りました。

ローマとバチカン市国が気に入りすぎて、2002年、2008年、2016年と、これまでに合計3回訪れています。
訪れた時期ごとに、在位している教皇が違っていたことも、非常に印象に残っています。

最後に訪れた2016年に在位されていたのは、フランシスコ教皇。
そのフランシスコ教皇が逝去され、現実でもコンクラーベが行われた2025年が終わろうとしている今、個人的な思い出とともに、映画の舞台となったバチカンについて、振り返ってみたいと思います。

※この記事は、2002年、2008年、2016年に訪れた際の個人的な旅の記録をもとに、2025年現在の視点で執筆したものです。

目次

通貨リラが残るローマへ|初めてのバチカンで感じた「変わらないもの」(2002年)

2002年2月に、ローマ・フィレンツェ・ヴェネチアをめぐる旅行でイタリアを訪れました。

この「2002年2月」というのは、「ユーロがイタリアに導入され、それまでに使われていた通貨リラと混在していた」という、特異な時期でした。

日本からの旅行者はユーロを使いますが、地方都市や小さいお店などでは、「ユーロで支払ったのに、お釣りがリラで返ってきた」ということがありました。

イタリアでのユーロへの切り替えは、2002年1月。
2月いっぱいまでは、リラと併用できる期間でした。

たまたま通貨が変わる過渡期に旅行したことで、「お釣りがリラで返ってくる」という珍しい体験ができたことを、今でもよく覚えています。

この旅行で訪れた都市はどこも素晴らしく、イタリアという国が大好きになったのですが、なかでも印象に残っているのは、ローマの中にあるバチカン市国です。

バチカン市国は、面積わずか0.44平方キロメートルという、世界最小の国家です。
1929年のラテラノ条約によりイタリアから独立した、教皇を君主とする絶対君主制。
国民は主に聖職者で、他にも数千人の職員がいて、職員はイタリアに居住し通勤しています。

足元の「白い石畳」が国境。イタリアの中の独立国バチカン

ローマの街を歩いていると、サン・ピエトロ広場の入り口で足元に白い石畳に気づきます。
その白い石畳を超え、列柱の内側に入ると、バチカン市国です。

サン・ピエトロ広場のオベリスク。背後に見えるのはバチカン宮殿(教皇の住まいがある建物)。コンクラーベ中、世界中の人々が注視する広場。映画でも重要な舞台です。

そこはイタリアではありません。
イタリア・ローマの街の中にありながら、イタリアとは別の独立した国家なのです。

パスポートの掲示は不要で、広場に入る際のセキュリティチェックだけで入国できるという、「厳格な一線を画しているが、開かれている」様子が、伝統を守りながらも世界と向き合う教会の姿そのものを表しているように感じました。

映画『教皇選挙』では、伝統と革新がぶつかりますが、バチカン自体が「何百年も変わらない姿」でそこにあることが、人々の信仰心の拠り所となっているんじゃないかと思います。

教皇がいるバチカン市国は、カトリックの総本山です。
カトリックの教義や方針は時代とともに進化したり、開かれたものになっていくだろうし、そうであるべきでしょう。
それでも、美しく堂々としたサン・ピエトロ大聖堂の荘厳な姿は、いつの時代でも変わりません。

変わるものと、変わらないもの。
変わっていかなければならないけれど、守らなければならないもの。

映画『教皇選挙』で描かれた光景は、それをあらためて感じさせてくれるものだったと思います。

3度の訪問でたどる教皇の遍歴|信仰を超えて心に響く「祈りの姿」

ローマに行ったら絶対にバチカン市国へ行く。

そうして合計3回、サン・ピエトロ大聖堂を訪れているわけですが、その時々で、在位している教皇が代替わりしていました。

2002年2月には、ヨハネ・パウロ2世。
2008年1月に訪れた際は、ベネディクト16世。
そして2016年2月は、フランシスコ教皇です。

私はカトリックの信者ではありません。
一般的な日本人で、分類するなら仏教徒になるのかなと思いますが、普段はあまり信仰というものを意識していません。

お正月には神社へお参りし、お寺で法要を行い、お墓参りをする。
日本古来のアミニズム、自然信仰に近いというか、「神様仏様はいっぱいいる」と無意識に思っている感じです。

なので、一神教であるキリスト教のカトリックに詳しいわけではないし、神様が一人しかいないという世界観は実感するのが難しいですが、信じている人にはそれが真実なんだろう、と思います。

それに、どの宗教であろうと、何かを信じ、祈りを捧げる姿は美しいし、その気持ちは本物なんじゃないかなと思っています。

ヨハネ・パウロ2世とコンクラーベ

2002年にバチカン市国を訪れた際の教皇であった、ヨハネ・パウロ2世。
日本でも馴染みのあった教皇だと思います。

バチカンを訪れたからといって、姿を拝見できるわけではないですが、サン・ピエトロ広場のオベリスクの背後に見えるバチカン宮殿に、教皇が居住していると思うと、「ここに教皇がいるのか〜!」と興奮するような気持ちになりました。

オベリスクの背後に見えるのがバチカン宮殿

2005年4月にヨハネ・パウロ2世が逝去されたときに、初めて「コンクラーベ」という儀式のことを知りました。

テレビでどんなものなのか解説されたり、コンクラーベでの煙が上がるところを生中継していたりしたので、とても印象的で心に残っています。

形式を問わない、普遍的な祈り

2008年に再びイタリアを訪れたとき、もちろんまたバチカンへ行きました。
その際、大聖堂内で、金枠と花飾りで縁取られたガラス棺に聖骸が安置されていました。

同行者と、「ヨハネ・パウロ2世じゃない?」と話し、お参りというか、お祈りをしようということになりました。
後日ちゃんと調べたところ、当時ヨハネ・パウロ2世は地下に安置されていたため、別人だったのですが、故人を偲んで祈る気持ちは相手が誰であろうと関係ないと思っています。

なにはともあれ、そのときに戸惑ったことが一つありました。
お参りをする際、何か宗教的な決まりがあるのだろうか? と思ったのです。

そうしたら、このような説明を受けました。

「何を信仰しているのかや、祈りの形式は問わない。自分の心の思うままに祈りを捧げてください」

そこで、日本で祈るときにほとんどの人が行うであろう「合掌」で、祈りを捧げました。

合掌が受け入れられた「懐の深さ」

このとき、カトリックの中心地、総本山であるサン・ピエトロ大聖堂で、カトリックの聖人へ祈りを捧げる際に、仏教や神道での「合掌」が受け入れられたことに感動しました。

バチカンの懐の深さ、垣根のなさを感じたのです。

映画『教皇選挙』でも、「多様性」や「宗教対立を避け、対話を試みようとする姿勢」が語られています。

カトリックは戒律が厳しいことで有名ですが、こういった形で開かれた教会の姿を見せてくれるのは、とても素晴らしいことだと思いました。

終身制の伝統と「生前退位」|映画の冒頭に重なるベネディクト16世の決断

2016年2月に3回目のイタリア旅行をした際にも、バチカンへ行きました。
ローマへ行ったら、絶対にバチカンへ行ってしまいます。

ミケランジェロの彫像・ピエタ。

ミケランジェロの彫像・ピエタ。バチカンの至宝です。

荘厳な聖堂の内部。

サン・ピエトロ大聖堂の天井の一部。大変に美しい。

訪れる人々を受け入れるように広がっている、ベルニーニ設計の柱廊(コロネード)。
教会が腕を広げて信者を迎える姿を表しているそうですが、信者以外の人々も受け入れてくれるのです。

広場を囲むコロネード(柱廊)。ベルニーニ設計で、教会が両腕を広げて信者を迎える姿を表している。

こちらは、初代教皇である聖ペテロのモザイク画です。
「天国の鍵」を持っています。

「天国の鍵」を引き継ぐものを選ぶ儀式、それが教皇選挙(コンクラーベ)なのです。

「天国の鍵」を持つ初代教皇ペテロが描かれている

歴史を動かしたベネディクト16世の「生前退位」

2008年に訪れたときの教皇は、2005年のコンクラーベで選出されたベネディクト16世でした。
2016年には、2025年4月に逝去されたフランシスコ教皇になっていました。

ベネディクト16世は、2013年に生前退位しています。
教皇が生前退位することは非常に珍しく、600年以上ぶりで、教会の伝統を変える異例の決定だったそうです。
前例は1294年のケレスティヌス5世以来のことで、近代教皇の終身制観念を覆しました。

「高齢による心身の衰え」を主な退位理由として挙げていたとのこと。
「職務を適切に果たすための精神と身体の力が最近衰えた」と辞任表明しています。

教皇が亡くなる直前まで職務に就いている姿は、映画『教皇選挙』の冒頭でも示唆されています。
心身に負担をかけていたのではないかと、首席枢機卿のローレンスはそのことをとても悔いていました。

逝去するまで職務を全うし、祈りを捧げ続ける姿は尊いですが、生前退位という選択ができるという前例をベネディクト16世があらためて示したことは、とても意義があることだと思います。

街に息づく教皇たちの面影

ちなみに、2016年当時、ジャニコロのターミナルでバスを降りてサン・ピエトロ大聖堂へ向かう途中に、この写真の建物がありました。

ジャニコロのターミナル近くのインフォメーションに掲示されていたヨハネ・パウロ2世のポスター

ここに掲示されているポスターは、ヨハネ・パウロ2世だそうです。
青い背景のポスターも、その後ろの手を上げているものも、どちらもヨハネ・パウロ2世とのこと。

ヨハネ・パウロ2世は今でも根強い人気があり、ジャニコロのターミナル周辺はヨハネ・パウロ2世関連の記念物が多いエリアです。

このときから9年経過し、今は2025年。
それもあと数日で終わり、2026年になります。

2026年にイタリア・ローマ、そしてバチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂周辺を訪れることがあれば、どの教皇のポスターが掲示されているのか確認してみるのも、楽しいかもしれません。

バチカンの扉を守る「誇り」|映画にも登場したスイス衛兵

2016年に撮影した写真の中に、バチカンを警護するスイス衛兵の姿があります。
教皇宮殿の門前に必ず立っているのが、色鮮やかな制服のスイス衛兵です。

バチカンを警護するスイス衛兵。2016年2月撮影で、冬のため制服の上にコートを着ている。

彼らはバチカンに雇われていて、主に教皇の警護と儀仗を担当しています。
映画『教皇選挙』でも、伝統的な制服に澪包んだスイス衛兵が、秘密厳守のコンクラーベの閉ざされた扉を守る姿が印象的でした。

2016年、そして2008年、2002年にも、彼らは直立不動で門番を務めていました。
「教皇を守る」という使命を帯びているスイス衛兵は、忠誠心が強く勇敢なのだそうです。

1981年にヨハネ・パウロ2世の暗殺未遂事件が起こったときにはスイス衛兵が即応したとのこと。

儀礼的な役割だけではなく、実際に警護を担当している凛とした佇まいは、まさに映画そのままの緊張感に満ちています。

まとめ|フィクションと現実が交差した2025年を振り返って

2025年は、フランシスコ教皇が逝去され、現実のコンクラーベが実施された、印象深い一年となりました。

コンクラーベをめぐる映画『教皇選挙』が公開された年に、現実でもコンクラーベが行われる。
フィクションとリアルが交わる、稀有な一年だったと思います。

コンクラーベの様子は原則非公開ですが、映画でリアリティたっぷりに描かれたことで、どんなふうに行われているのかを想像しやすくなりました。
とても根気のいる、大変な作業です。

儀式を取り仕切る首席枢機卿の気苦労や、シスターたちによる細やかな気遣い。
だいぶ開かれたものになってきたとはいえ、選出される教皇次第で、時代に逆行してしまうこともありえてしまう。
そんなことを感じさせつつも、「新しい教会の形」を模索し、前進しようとする姿を、映画『教皇選挙』は見せてくれました。

リラとユーロが混在していた2002年から、3度のバチカン訪問を経て、たどりついた2025年。
私がサン・ピエトロ大聖堂で捧げた「合掌」のように、これからの教会も、私たちの世界も、互いの祈りを尊重しあえる場所であってほしい。

映画はフィクションですが、物語の最後に示された「希望」に、現実が少しずつでも近づけるようになればいいなと思います。

映画『教皇選挙』をより深く楽しむために|まとめ記事あり

まだ映画をご覧になっていない方、あるいは鑑賞後に深い余韻に浸っている方は、ぜひ以下の記事もあわせて読んでみてください。
映画を見る前の予習や、物語を掘り下げた考察をまとめています。

【まずは基本情報を知りたい方へのまとめ】
→「映画『教皇選挙』完全ガイド【総まとめ】」はこちら
(どんな映画なのか、みどころは何かを知りたい方向けの、まとめ記事です)

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【映画を見る前の予習に】
→「映画『教皇選挙』を見る前に知っておきたい! 4つのポイント」はこちら
(コンクラーベについてなど、知っておくと映画が楽しめるポイントを解説しています)

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